【テーマ:なし/お相手:レギュラス】
今回は少し変則的と言うか、事前に「下書き交換して遊ぼう!」と言う取り決めをしたわけではなく、なりゆきで何となく下書き交換にすることになりました。
めかぶさんが「レギュラス夢書いていたら途中で詰まったのでたぶんこれボツ」と言っていたのを見せてもらって、あまりに萌えたのではしゃぎ倒していたら何やかんやで紺が書かせてもらうことになり、やっぱり私も以前書いて詰まったレギュラス短編の下書きとトレードしました。下書き交換と言うか、下書き再利用と言う言葉の方が正しいような気がします。
<<※中編のネタバレを含みます>>
「グレトナ・グリーンに行けば、駆け落ちを成功させられるんだって」
スリザリンのネクタイこそ締めてはいたが、その身に流れる血には尊さの欠片も無い。
ただ顔が好きだった。こうしてマグルの与太話を持ち込むような思慮のなさが、気遣いをしなくて済むから楽だった。
レギュラスが構う人間の数は少ない。滅多に人になつかない猫が寄ってくるのってこんな気持ちなのね。そんなことを言って笑う。そうやって笑う少女の笑顔は屈託のないものだ。お世辞にも賢明とは言えない。だからこそ、裏表すらも作り出せようが無い。腹芸が横行する人間関係の中での一種の清涼剤として吹き込む風。
夏のパーティで許嫁と会った。レギュラスの言葉に、#名前#は「どんな人だった?」などとのんきに返す。その言葉をつむぐ口元のわずかな引きつりを、レギュラスは無視した。
愚かな少女だったが、それでも自分とレギュラスとが違う世界の人間であることを理解するだけの賢さを持ち合わせていたことは不幸でしかない。
「私達もいつか、一緒にグレトナ・グリーンに行けたらいいね」
これが兄だったら、そうだなと即答していたのだろうか。レギュラスの中にだけ反響する問いは、誰にも届かない。
「ねえ、そう思わない?」
それなのに、そう思わないとも返すことができない。
答えを失ったレギュラスの声は沈んでいく。
「もう――」
レギュラスの両の頬が、少女の小さな手のひらに挟まれる。そして、ぐいと#名前#の方に顔を向けられた。
柔らかい熱が唇を包む。レギュラスの声を、言葉を飲み込むかのようなキスだった。
「ぼーっとしないで、私を見て!」
怒ったような#名前#の顔。
許嫁として引き合わされたのは、どんな少女だったか――。顔すらもおぼろげな輪郭にふちどられたイメージしかない。何もかも、どうでも良かった。大事なのはブラック家にふさわしい家格の出であること。血を繋ぐだけの能力もあればなおのことよし。そこに人格などは必要とされない。
自分たちは高貴なる青い血を未来永劫受け渡していくだけの器。
レギュラスの頬を包む手のひら。熱い唇。彼女の全てが熱を孕んだ柔らかいもので構成されている。
レギュラスにとって不要なものばかりで出来ている、愚かな女。
いつか一緒に居るのが許される所に行こうね。
そんな約束を交わした片割れは、冷たい水の奥底に眠る。グレトナ・グリーンでもどこでもない、遠い遠い場所。法律もあらゆるしがらみからも隔絶された水底で、レギュラス・ブラックは永遠に眠る。