1995年、7月。一人で全部背負い込んで、何も教えてくれないドーラが寂しかった。
『アルバス・ダンブルドアの陰謀』。日刊預言者新聞にはそんな見出しが躍っている。ダンブルドアが今更魔法省大臣のポストなんて狙うだろうか。それに、セドリックが死んでしまったことに関しては何一つ触れられていない。そんな疑念を抱きながら記事を追っていると、私の横を誰かが通り過ぎる気配がした。
「待って、ドーラ、どこへ行くの?」
真夏だと言うのに、しっかりとローブを着こんでいるドーラは、どう見てもこれから出掛けると言った風情だ。急いでいたのか、そのままトーストを掴むとすぐに姿現ししてしまおうとする。私は慌ててローブの裾を掴んで引き止めた。
「今日は仕事は休みでしょ? 家に居ればいいじゃない」
「仕事じゃないよ。でも行かなきゃいけないの」
ごめんねと、疲れた顔で笑う。なだめるように頭を撫でられた。夏休みが始まってから、ロクにドーラと話せてない。ドーラはなぜかとても忙しそうで、ほとんど家にも帰って来ない。やっと帰って来たと思ったらすぐにまたどこか出掛けてしまう。バシッと音がして、ドーラが消えた場所を見つめながら私はキッチンの母さんへと問いかけた。
「ねえ、母さん。ドーラはどこへ行ってるんだと思う? 恋人のところってわけじゃないでしょう?」
「レイチェルは知らなくていいの。あの子も大人なんだから、あんまり詮索するんじゃありません」
恋人のところに行くんだとしたら、あんなに疲れた顔をしているのはおかしいだろう。ドーラは何か、仕事をしに行っている。でも闇祓いの仕事じゃない。じゃあ、一体何に? 考えてみても、答えは出ない。母さんに叱られて、私はむっつりと黙りこんだ。別に、根掘り葉掘り詮索なんて、してないのに。
「それから、こんなくだらない新聞はもう読む必要はないわ」
母さんがそう言って、私の手から新聞を取り上げた。コーネリウス・ファッジの写真が真ん中から二つに破れる。細かく破られた紙片がそこら中にひらひらと舞った。
納得はできなかったけれど、母さんの言うことは正しかった。ドーラは私よりも9歳も年上で、大人の闇祓いで、だから私よりもずっと多くのことを知っている。私はようやく13歳になったばかりで、何も知らない無知な子供だった。
騎士団のことも、ヴォルデモートのことも、グリモールド・プレイスのことも。ドーラや母さんは、何一つ私に教えようとはしなかった。私を、守るために。何も知らずに、平和に日常を送れるように。
だからかな、ドーラ。あの頃の私は、貴方の背中ばかり見ていた気がする。