<第9回>フリートーク
「リスナーの皆さん、こんばんは! 金曜日の夜は魔法界の扉を開けましょう。パーソナリティは私、ホグワーツ魔法魔術学校4年、レイブンクロー寮所属のレイチェル・グラントと」
「同じくハッフルパフ寮所属、セドリック・ディゴリーです」
「もうこの挨拶で始められるのもあと1回なのね」
「そうだね。やっぱり、まだ実感が湧かないけど」
「私も。最終回間近の今日は20分まるごとフリートーク! ココアでも片手に、肩の力を抜いてお聞きくださいね」
「それではリスナーの皆さんも、タイトルコールをご一緒にどうぞ」
「「ホグワーツ生の、ここだけの話!」」
<CM>
「……ねえセド」
「どうかした?」
「20分……持つと思う?」
「うーん……自信はないけど……頑張るしかないよ」
「放送事故だけは避けたいものね」
「……あ」
「何? 何か名案でも思いついたの?」
「いや、そうじゃなくて……あれ……」
「? ブースがどうかし……た……」
(ハーマイオニーが『もうCM終わってる!』とフリップを出している)
「…………」
「……え? ちょっと待って、これ、もうマイク入ってるってこと?」
「……みたいだね」
「え……セド、これ、マズい……のよね?」
「たぶん……って言うか……うん……放送事故じゃないかな……」
「どうしよう…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……えっと、では、気を取り直して今日のテーマに入りたいと思います! その……」
「……まずは質問の紹介から行こう!」
「そうね! えーっと……ラジオネーム、マグルの姉さんからのお便りです。ありがとうございます!
『ディゴリーくん、グラントさんこんにちは!』 ……こんにちは!『いつも楽しく聞いております。私はホグワーツ2年に妹を持つマグルの姉なのですが、最近妹にボーイフレンドができたそうです。ませているなぁとびっくりしたのですが、ホグワーツみたいな寮生活だと一日中一緒にいるわけだしカップルもできやすいんですかね? ホグワーツの恋愛事情はどんな感じなのでしょうか?気になります!』……ですって。どう?」
「『どう?』って聞かれても……」
「……だって私よりはセドのほうがまだそう言うことに詳しいでしょ。モテるもの」
「そんなことないよ……本当に」
「ふーん。じゃあそう言うことにしておいてあげる。それにしても……2年生でボーイフレンドが居るのって、ホグワーツの中でも早い……わよね?」
「そうだね。僕達の学年でも、そう言う……決まった相手が居る子はそんなに多くないよね」
「私の周りでも片手で足りるくらいしか居ないもの。パ……友達は、彼氏が居るけど……」
「下級生だと、女の子の方がそう言うの多いんじゃないかな」
「あっ、そうやって逃げようとしてもダメよセド。男の子だって、ロ……私の同級生みたいに、色々な女の子とデートしてる人も居るんだから」
「……それは特殊な例じゃないか」
「まあ、確かに『特殊』よね。セドがああなったら私、何か変な薬でも盛られたのかと思っちゃう」
「……ホグワーツ生がどうこうって言うより、個人の性格の問題のような気がする」
「それを言ったらおしまいのような気がするけど……まあ、ホグワーツ以外の学校を知らないからわからないけど……上級生になるとカップルは多いわよね」
「うん。それはそうだね」
「一緒に居る時間が長いから、周囲の人のことをよく知れるし……いいところも見つけやすいのかも」
「ああ、それはあるよね。初対面のときはちょっと気が合わないなって思った相手でも、一緒に過ごすうちに長所が見えて来て仲良くなれたりするよね」
「…………」
「どうしたの? レイチェル」
「……誰かそう言う相手が居るの?」
「え? ……居ないよ?」
「えー……嘘。だって今の言葉、すっごく実感がこもってる感じだったもの」
「友達の話だよ……。そんな期待した顔されても、居ないものは居ないよ……」
「なぁんだ。まあ確かに、寮生活って普通の学校生活よりも同級生とか後輩のことをよくわかるわよね。全員じゃないけど」
「卒業後も学生時代の繋がりが続いてることも多いしね。父さんの学生時代の後輩が家に遊びに来たりとか……」
「学生時代の恋人と結婚する人も多いしね。セドの両親もそうでしょ?」
「そうだね」
「やっぱり、もうどんな人かって十分わかってるから、安心できるのよね、きっと。えっと、質問から話が逸れちゃった。『ホグワーツではカップルができやすいのか』……だったわよね?」
「そのはずだよ。うーん……やっぱり、一緒に居る時間が多いからできやすい……のかな?」
「私達が知ってるのって、校内でも目立つ人達とか、寮の上級生とかだけだし……付き合ってても内緒にしてるカップルも居るみたいだから、きっと私達が思うよりずっと多いのよね……」
「内緒に? どうして?」
「さあ……私は当事者じゃないからわからないけど……からかわれるのが嫌……とか?」
「あー……なんとなく、わかる気がするよ」
「同じ寮内とか学年内とか……身近なところでカップルが居ると、やっぱり周囲も気を遣う……って言うか、気になっちゃうもの。それも嫌なのかも」
「そうだろうね。まあ、僕の身近にはまだ居ないから想像だけど……」
「じゃあ、質問の答えは『ホグワーツではカップルができやすい』ってことでいい?」
「そうしよう。マグルの姉さん、どうもありがとうございました」
「マグルって言えば……私、マグルの学校の方が恋愛って進んでるものだと思ってたわ」
「どうして?」
「だって私達と違って、もっと小さい頃から学校に通ってるでしょ? だから、こう、マグルの子って社交的な子が多いイメージだもの。それに、私のマグル生まれの友達も、ホグワーツに来る前に男の子とデートしたことがあるって言ってたし……それが普通だったって。それにほら、夏休みにロンドンに行ったじゃない? そのときもセド、マグルの女の子に電話番号のメモを渡されてたでしょ? だから、マグルの女の子って積極的な子が多いのかなって思ってたの」
「……んー……マグルの女の子が全員そうなわけじゃないと思うよ。僕の寮にもマグル出身の1年生が居るけど、すごくシャイな子だしね。じゃあ、そろそろ次の質問に行こう。ラジオネーム、ハナさんからです。ありがとうございます。『他寮のひと(とくにほかの学年)との出会いってあるんですか? ホグワーツカップルはどーやって愛を育むのか気になります』」
「出会い……うーん、出会い……?」
「同学年だと、他寮生でも授業が一緒になるよね。どの寮とも合同授業があるように組まれてるから」
「一緒に授業を受けるだけだから、未だに話したことない人も居るけど……まあ、名前と顔くらいは大体わかるわよね。話しかけようと思えばそんなに難しいことじゃないし。でも他の学年ってなると……」
「やっぱり、一番のきっかけはクラブ活動だよね」
「そう思うわ。でも、私の場合はクラブには女の子ばっかりだったから……この質問って、異性ってことよね?」
「たぶんそうだと思うよ」
「んー……他寮生との出会い……? クラブ活動以外にはないような……」
「逆に、レイチェルが寮も学年も違う男の子とどうやって知り合ったか考えてみればいいんじゃないかな?」
「ああ、なるほどね!……って言ってもそんなに居ないんだけど……」
「僕もクィディッチ関係ばっかりだよ」
「えー……? うーん……女の子だとママのことで話しかけてくれることが多いんだけど……男の子……? 違う寮の友達の紹介とか……? あと、友達の兄弟や親戚とか……困ってるところを助けてもらったりとか……廊下でぶつかって話すようになったりとか……ふくろう小屋で会ったりとか……ダメ、一方的にこっちが知ってる人なら多いけど、友達って断言できる人って本当に少ないもの」
「学年が違うと1日のタイムスケジュールも全然違うから、やっぱり同学年に比べると仲良くなるのは難しいよね。寮が一緒ならまだ、談話室で話したりとかできるけど……」
「それこそ図書室か、クラブ活動かって感じになるわよね……もしもクラブも学年も寮も違う人を好きになったら、大変かも。えっと、後は……『ホグワーツのカップルはどうやって愛を育んでるか?』」
「うん」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ほ、箒で二人乗りして星空をデートってよく聞く気がするわ!」
「あ、それに、ふくろうでこっそり手紙をやり取りするって言うのもよく聞くね!」
「あと、ホグズミードに誘われて付き合うようになったとか!」
「バレンタインにカードをもらったとか……」
「…………」
「…………」
「…………」
「……質問、あらかじめ周りにリサーチしてくるべきだったかな」
「そう思うわ。でも、ちょっと恥ずかしいかも。セド、周りのカップルに、『どうやって付き合うようになったの?』って根掘り葉掘り聞ける?」
「…………無理かな……」
「どうやって愛を育むかって言うより、ホグワーツ生の告白スポットならいくつかわかるんだけど……」
「え、そうなの? どこ?」
「えー、有名じゃない。天文台でしょ? 湖の城側から数えて7本目の木の下。夕日が綺麗に見えるらしくて……あとは時計台の裏でしょ? それにスプラウト教授の薔薇の温室。図書室の妖精の呪文の棚の裏側。あとレイブンクロー生だと夜の談話室もそうだって聞いたことあるわ。あ、あとマダム・パディフットの喫茶店?」
「そうなんだ……」
「噂だけどね」
「あ、レイチェル。もうそろそろ時間みたいだ」
「え、もう?なんだか今日は全然質問に答えられて気がするわ……せっかく質問してもらったのに、ごめんなさい」
「うん。僕とレイチェルだと、ちょっと力不足だったね」
「ね。もっと、そう言う事に詳しい人に代わりに出てもらった方がよかったのかも。それに、最初の方もちょっとみっともないことになっちゃったし」
「そうだね。次で挽回できるように頑張ろう」
「次って言ってももう最後だけど。次回はいよいよ最終回。テーマは『私達にとってホグワーツとは』です。最後までお付き合いいただけると嬉しいです」
「では、今日はこれでお別れにしましょう。お相手は、セドリック・ディゴリーと」
「レイチェル・グラントでした。来週もまた、お会いしましょう!」
<エンディングテーマ:妖女シスターズ『バンシーに恋して』>
「この番組は、BBC、日刊預言者新聞、週間魔女の提供でお送りしました」