パメラのいじめ対策法(5)

女の子が誰かを嫌った時どうするかと言えば、マグルだろうと魔女だろうと行動パターンはほとんど同じだ。その子の言動にとことん注目するか(つまり、嫌がらせや聞こえよがしな悪口)か、表向きは我慢して友好的に接して仲良しの友達に愚痴を聞いてもらう(つまり、陰口)か、相手のことを居ないものとして扱う(つまり、無視)か。どれが相手を傷つけるかなんて知らないけれど、パメラはエリザベス・プライスの存在を徹底的に無視することに決めた。自分だけじゃなくパパとママまで馬鹿にしている相手に、表面上だけでも友達として接することができるほど、パメラはお人好しじゃない。それに、悪口は自分の評価まで下げるとわかっていたし、意地悪なことをすると意地悪な顔になってしまうとママに言われていたから。パメラはできるだけ、人の悪口を言わないようにしている。もちろん、スリザリン生については別だ。

「なんであの子、スリザリンに入らなかったのかしら」
「取り澄ましちゃって、いやな感じ」
「セドリックったら、あんな子にまで優しくすることないのに」

とは言え、それがパメラの周りにまで適用されるかと言えば話は別だ。明らかにエリザベスのことだとわかる愚痴をブツブツ言いながら、ハッフルパフの女の子達の一団が向こうを歩いている。その横を、急ぎ足で誰かが通り過ぎていった。話題のエリザベス・プライス本人だ。離れているパメラにも聞こえてきたくらいなので、会話の内容はバッチリ耳に入ってしまっただろう。声が段々と遠ざかると、困り顔のレイチェルがパメラを見上げて首を傾げてみせた。

「……ねえ、パメラ。エリザベスと仲直りしないの?」
「向こうは別にしたいとすら思ってないんじゃない?」
「そんなことないと思うけど……」

あれ以来、パメラにちっとも話しかけようともしてこないところを見ると、そうなのだろうとパメラは思っていた。
女の子と言う生き物は、よく知らなくても誰かから話を聞いただけでその人のことを大嫌いになれる。
大広間での一件は1年生の間であっと言う間に広がり、今ではスリザリン寮を除いたほとんどの女の子がパメラの味方だった。純血思想は、魔法使いの間でも嫌われているらしい。そして、社交的なパメラから言わせてもらえば、エリザベスの態度もよくない。誰に話しかけられてもつまらなそうにツンと澄まして、あれじゃあ仲間外れにしてくださいと言っているようなものだ。まあ、やっかみもあるのだろうけれど。
誰もが名前を知っている純血名家のお嬢様。頭が良くて、先生達からの評判もいい。美人だから男子生徒にも人気があるし、上級生からも可愛がられている。
憧れと嫉妬は表裏一体。エリザベス・プライスは女の子達にとても羨まれて、妬まれて、嫌われている。

「別に、私抜きでレイチェルがあの子と仲良くするのは止めないから安心して」
「……私、3人で仲良くしたいわ」
「あの子が謝って来たら考えるわ。じゃなきゃ絶対イヤ!」

レイチェルがエリザベスを心配するのもわかる。エリザベスはいつ見ても1人だし(もしかしたら1人が好きなのかもしれないけど)、悪口を言われたら大抵の人は傷つくだろう(もしかしたら、同級生達の言葉なんて聞く必要ないと思っているのかもしれないけど)。パメラがエリザベスと仲直りすれば、彼女が純血主義だと言う疑惑(誤解かもしれないとレイチェルは言うけれど、パメラにはそうは思えない)(だって、誤解ならそう言えばいいはずだ)はなくなるだろうから、女の子達の態度だって緩和するだろう。
嫌われたり、悪口を言われたりするのは可哀想だとは思う。けれど、元はと言えば原因はエリザベスだ。向こうはたったの一言すらも謝っていないのに、どうしてひどいことを言われたパメラの方から折れなければいけないのだろう。冗談じゃない。
レイチェルは2人の仲違いをとても深刻に考えているようだったが、実のところパメラは別に現状をどうにかしたいとは思っていなかった。大勢の人間が1つの空間にぎゅうぎゅう押し込められていたら、1人くらいはどうしたって気の合わない人間が居ても仕方がない。それがたまたま運悪く同寮生で、ルームメイトだったと言うだけだ。
同室のレイチェル達には悪いけれど、エリザベスがごめんなさいと言うまでは、パメラはどうしても話しかけなければいけない用事がない限り、エリザベスとは話したくない。本当なら、他の誰かと部屋を代わってほしい。向こうだってきっと、その方が嬉しいだろうし。たぶん、卒業まで関わらない方がお互いのためだと思う。
家柄だとか血筋だとか、パメラの努力ではどうしようもないことで嫌われているのなら、気にするだけ無駄だとも思う。エリザベスに嫌われていたところで、パメラにはたくさんの友人が居る。1人に嫌われて悲しいとくよくよするよりも、50人の友達が居る幸せを喜んだ方がいい。ポジティブシンキングはパメラの長所だ。

「そう言えばレイチェル。家からお菓子贈られてきたんだけど、後で一緒に食べない?」
「マグルのお菓子!?」
「もっちろん。あ、でもちょっと待って。隣の部屋にもお裾分けしなきゃ」
「あ、ねぇ、パメラ……セドにもあげていい?」
「別にいいわよ、たくさんあるし。本当仲良いわよね、あなた達って」

エリザベスに嫌われていても、パメラのホグワーツ生活はとても楽しい。授業は難しいけれど、知らないことばかりで面白いし、レイブンクロー生はちょっと頭が固いけれど皆親切だ。グリフィンドールやハッフルパフの友達もたくさんできた。いくらホグワーツの中でマグル生まれが異端で、スリザリン生達が純血こそが偉いのだと思い込んでいたって、マグルの子供も魔法使いの子供もそんなに変わらない。皆、甘いものやお菓子が大好きで、勉強が大嫌いで、女の子は流行の音楽やファッションの話題に目をキラキラさせているし、男の子はスポーツに夢中だ。
パメラがパメラらしく振る舞ってさえいれば、ここにもパメラのことを好きになってくれる人はたくさん居る。パメラが魔女だとわかったって、両親には相変わらず愛されている。

10歳のパメラ・ジョーンズは自分のことを世界で100番目くらいには幸せな子供だと思っていた。
そして11歳のパメラ・ジョーンズもやっぱり、自分はとても幸せな子供だと思っている。

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