パメラのいじめ対策法(3)

「ねえ、もしかして、あなたってマグル生まれ?」

豪華な晩餐が始まってすぐのこと。パメラは向かいに座っていた新入生に話しかけることにしたのだが、パメラが名乗るとまず相手はすぐにそう返して来た。もしかしなくてもそうだ。汽車の中でわかったことだが、マグル生まれの魔法使いはそう多くはないらしい。そして、それは真っ先に聞かれるほど魔法界では重要事項なのかと、パメラは胃の辺りが重くなった。

「え、ええ……そうだけど、それが?」

もしや、またさっきのようなことが起こるのだろうかと、パメラは警戒してフォークを握る手に力を込める。顎を引いて、相手を強く見返した。さっきは訳がわからず言われっぱなしだったけれど、喧嘩なら買おう。両親がマグルだからって、馬鹿にされるのは耐えられない。パメラにとって大切な両親なのだ。

「ねぇ、マグルの写真って動かないって本当? 肖像画も喋らないの?」
「はっ?」

が、続けられた言葉にパメラは拍子抜けした。こちらを見返して来る少女の表情にはさっきの男の子のような悪意は見当たらず、好奇心いっぱいと言った様子だ。戸惑ったものの、ぎこちなく頷いてみせると、感動したようにほんのりと頬を染めてほうっと息を吐く。パメラが面食らっていることに気づいたのか、少女は友好的に笑みを浮かべてみせた。

「あ、ごめんなさい。私、レイチェルレイチェルグラント。よろしくね、パメラ」
「ああ……うん……こちらこそ」

その顔にはやっぱり、全く敵意や嘲りは感じられない。パメラはホッとして肩の力を抜いた。「魔法使いの家系だからって、皆が皆マグル生まれを馬鹿にしているわけじゃないんだよ」さっきの監督生の言葉はどうやら本当だったらしい。パメラは疑ってしまったことを申し訳なく思って、微笑んだ。

「ねえ、何かマグル製品って持ってきてる?」
「え……ああ、まあ少しは……」
「本当!? ね、よかったら見せて!」
「いいわよ」
「ありがとう! すごく楽しみ!」
「ね、魔法界の写真って動くんでしょ? 私はむしろそっちが見たいんだけど」
「お安いご用よ!」

キラキラと目を輝かせるレイチェルは、本当に嬉しそうに笑う。まるで新しいオモチャを前にした小さな子供みたいで、パメラは思わずクスクス笑ってしまった。どうやら、パメラにとって魔法の道具の数々が珍しいのと同じように、レイチェルにとってはパメラにとっての当たり前の品々がとても新鮮らしい。

レイチェルは、両親とも魔法使いなの?」
「そう。パパはドラゴン研究所で働いてる。ママは小説家。オッタリ―・セント・キャッチポールのはずれに住んでるの」
「オッ……何て?」

どこだそれ。パメラには馴染みのない地名だけれど、レイチェルの説明によればどうやら魔法界では割とポピュラーな地名らしい。パメラの住んでいる場所がサリー州だと言うとやっぱりレイチェルは首を傾げたので、2人の一般常識はほとんど正反対らしかった。パメラが想像した通り、レイチェルは魔法界で生まれ育ったらしい。
それならばと、パメラは声を潜めて気になっていたことを尋ねてみることにした。

「その……もう、魔法、使える?」

入学前に受けた説明では、マグル生まれの魔法使いでもスタートは一緒だと説明されたが、列車での一件でパメラはその言葉を疑いはじめていた。「純血」とやらの魔法使いの子達は、もしかしたら既にパメラの知らないような魔法を使えるんじゃないだろうか。だとしたら、落ちこぼれて馬鹿にされてしまうかもしれない。パメラは不安に表情を曇らせたが、分厚いステーキを切り分けていたレイチェルはその質問をあっさり否定した。

「全然よ。自分の杖を買ってもらったのだって最近だし。ほら、杖って高いから。ママの杖、勝手に使ったことはあるけど私とは相性悪いみたいで爆発起こしちゃって。後でたっぷり叱られて、それからは1度も触ってない。大体の子供は、ホグワーツのお祝いにって買ってもらうみたい。私もセドもそうだし。名家の子はちょっとわからないけど……皆そんな感じだと思うわ。もう魔法を使いこなせるなら、わざわざ学校なんて来る必要ないでしょ?」
「……セド?」
「幼馴染。隣に住んでるの。今はハッフルパフのテーブルに座ってるはず」
「へぇ。入学前から知ってる子が居るっていいわね」
「でも、セド以外は知らないから、パメラと似たようなものよ」

レイチェルの言葉に、パメラはまた1つ不安が解消されて安心した。それもそうだ。
そんなパメラ達の会話が聞こえていたのか、斜め前に座っていた上級生が授業について色々と教えてくれた。やっぱり杖を使った魔法はほとんどの生徒が初めてなので、純血だからって優秀なわけでも、マグル生まれだからと落ちこぼれてしまうわけでもないらしい。むしろ、魔法史や天文学や色々な理論については、既に算数や歴史なんかをある程度学んでいるマグル生まれの子の方が得意なことも多いと聞かされて、パメラはホッとした。

夕食が終わる頃にはパメラはレイチェルとすっかり打ち解けて、まるでずっと前から友達だったような気がしていた。

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