パメラのいじめ対策法(2)

ところが、待ちに待った9月1日。9と3/4番線からホグワーツ特急へと乗り込んだパメラは、早速魔法界の洗礼を受けることになった。事の次第は、魔法使いの家の子供なら「ああ」と訳知り顔で苦笑するような、けれどマグル生まれのパメラにとってはある意味不可避の出来事だった。知らなかったのだ。原因はそれに尽きる。
重たいトランクを引きずりながら、パメラは汽車の通路を歩いていた。魔法使いの知り合いなんて勿論1人も居ないので、パメラは誰か知らない人と相席しなければいけない。まあ人見知りする性格ではないのでそれ自体はそれほど憂鬱ではなかったけれど、問題は思った以上に汽車が混んでいることだった。空席がまるで見当たらない。3つ目の車両へと進んだところでようやく空いているコンパートメントを見つけたので、パメラは先客に使っても構わないかと聞いたのだ。すると、中に座っていた男の子は頭の先から爪先まで値踏みするようにじっくりとパメラを眺めた。

「……君、名前は?」
「パメラ・ジョーンズよ」

自分から名乗らないなんて失礼な子だなと思ったが、持ち前の社交性でパメラはにこやかに応じた。初対面の相手には笑顔で接するのがパメラのポリシーだ。そうしたら、今度は両親は何をやっているのかと尋ねられた。やっぱり相当に失礼だなとは思ったけれど、素直に────つまり、父親は化粧品会社をやっていて、母親は元キャビンアテンダントで今は専業主婦だと言うこと────素直に答えると、向けられる視線はあからさまに胡散臭そうなものに変わった。

「……つまり」

少年が呻くように言った。まるで苦虫を噛みつぶしたような表情だ。少なくとも、あんまり紳士的じゃあない。少年はいかにも誰かに命令し慣れていますと言う感じの高慢で神経質そうな顔つきだったし、仕立ての良い金ボタンのジャケットを着ている。お金持ちの子みたいに見えるのに、お行儀って習わなかったのかしら。パメラは不思議に思った。

「……つまり、君の親はマグルなんだな?」

マグルって何だっけ。パメラは思わず聞き返しかけたが、そう言えば例のホグワーツの先生が魔法が使えない人達のことをそんな風に呼ぶのだと言っていたことを思い出した。その通りだと頷くと、少年はキッと目を吊り上げて、まるで親の敵かのようにパメラを睨みつけた。

「あっちへ行け! 僕に構うな!」

鼻先でバシンと大きな音を立てて閉まったドアに、パメラは目を白黒させた。
パメラはとびきりの美人と言うわけではないけれど、顔立ちだって結構可愛いし、艶やかなブロンドと青い目は皆に羨ましがられる。何より、明るいし社交的だ。少なくとも、初対面の男の子にこんな失礼な扱いを受けることは初めてだった。
呆然と立ち尽くしていると、怒鳴り声が気になったのか廊下の向こうから誰かが走って来た。男の子だ。背が高い。それに、ハンサム。パメラよりもずっと年上に見える。

「えっと、君、新入生? 何があったの?」

パメラに目線を合わせるようにして尋ねてくれた少年に事情を話すと、「ああ」と納得したように苦笑された。ようやくショックから立ち直ったパメラは、なんだか段々ムカムカしてきた。どうして、会ったばきりの子にあんな態度を取られなければいけないんだろう。パメラに何も落ち度はないはずだ。

「……スリザリン家系の子と当たったんだな。運悪く」
「スリザリンって、確か、4つの寮の1つ……の?」
「そう……彼らは、何て言うか……先祖代々魔法使いであることが、何より重要で、偉いって思ってるからね」

だから、両親がマグルかどうかを確かめられたのか。パメラは納得したものの、同時にひどく不愉快な気分になった。要するに、血筋によって差別が行われていると言うことだろうか。だとしたら、この先7年間ずっとこんな扱いを受けるのだろうか?
パメラの不安を読み取ったかように、少年はパメラの頭を優しく撫でた。

「でも、純血……あ、彼らは自分達のことそう呼ぶんだけれど……純血だからって優秀とは限らないよ。俺も混血だけど、こうやってレイブンクローの監督生になれたし。ホグワーツが皆、あんな連中ばかりじゃないよ。むしろあっちの方が少数だし……あんまり気にしない方がいい」

血筋で差別なんて、なんて時代遅れなのかしら。少年の慰めの言葉を聞きながら、パメラは眉を寄せた。
彼が見つけてくれたコンパートメントの中には、パメラと同じマグル育ちの新入生も居て、パメラはさっきの嫌な出来事を忘れて楽しくおしゃべりすることができた。中でもやっぱり新入生にとって1番盛り上がるのは、組分けの話だ。

「スリザリンだけは絶対嫌。私はたぶんハッフルパフかなあ。勉強得意じゃないもの」
「私も。お姉ちゃんもそうだし……お姉ちゃんが言ってたけど、グリフィンドールとスリザリンって仲が悪いじゃない? グリフィンドール生は、廊下を歩いてるだけでスリザリン生から呪いをかけられたりするんだって」
「だとしたらグリフィンドールも微妙かもね! ダンブルドアの寮だって言うのは魅力的だけど……」

そんな会話を聞きながら、パメラもどうしようかと考える。どの寮もそれぞれ楽しそうだし、特にそのうちのどれか1つに入りたいと言う強い気持ちはなかった。強いて言うなら、グリフィンドールがパメラの性格に合いそうで楽しそうだなと思っていた。けれど、スリザリン生がさっき会った子みたいなのばかりだとしたら、できるだけ関わりたくない。だとしたら――――――

「ふむ……明るく、好奇心旺盛。頭も悪くない。どこでもやっていけるだろう。ふむ、強いて言うなら、君に向いているのは、グリ……」
「レイブンクローがいいわ」

組分け帽子の言葉を遮って、パメラはきっぱりとそう言った。
正直、勉強はそんなに好きじゃないれけど、パメラはプライマリースクールでも優秀な方だった。頭の回転も早いし、要領がいいのだ。たぶん、レイブンクローでも何とかなるだろう。組分け帽子もそれがわかったのか、パメラの希望を聞いてくれた。レイブンクローのテーブルで、さっきの男の子がこっちに手を振ってくれたのが見えて、パメラは思わず微笑んだ。

明るく社交的なパメラなら、きっとどこの寮でもやっていけるだろう。けれどどうせなら、素敵な上級生の居る寮がいい。
それがハンサムで優秀で優しい監督生なら、尚更だ。

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