22:45 就寝:レイブンクロー寮

レイチェル! そろそろ消灯時間よ!」

パメラのそんな声に、レイチェルはマグル学のレポートとの睨めっこをやめて顔を上げた。時計を見てみると、確かに消灯まであと10分を切っている。シャワーで湿っていたはずの髪も、いつの間にかすっかり乾いてしまっていた。どうやらレポートに集中するうちに、かなり時間が経っていたようだ。しかしまあ、集中した甲斐あって一応終わった。レイチェルは椅子から立ち上がると、自分のワードローブへ向かい、パジャマに着替えた。そして柔らかなマットレスへと心地良く身を沈めて、まだ机に向かっている友人の背中へと声をかけた。

「エリザベス、今日は結構冷えるみたいだから風邪引かないようにね」
「ええ」

会話を遮るかのように照明が落ち、部屋の中が暗くなる。サイドテーブルに置かれたランプに杖を向けて灯りをつけると、レイチェルは枕の上に本を置いてその表紙を開いた。昼間、ドラコから貸してもらった本だ。上機嫌で読み進めていると、隣のベッドのパメラが不思議そうに聞いてきた。

レイチェル、それ何?」
「『魔法戦士アウフシュタイナーの醜聞』。前から読みたかったの」
「ああ、なんだっけ、『絶版でプレミア付きだから高くて買えないし、図書室のは予約でいっぱいで3ヶ月経たないと回って来ない!』とか言ってたやつ?」
「そう。まだ序章だけど、やっぱり面白そう」

古い本だから、寝る前の読書にしてはちょっと小難しい気がするけれど、とても興味深い内容であることは間違いない。ドラコに感謝だ。エリザベスの家もそうだけれど、名家と言うのは普通は手に入らないような本が当たり前に置かれているから羨ましい。そんなことを考えていると、パメラがごろりと寝返りを打ったのがわかった。

「あー、明日は朝から薬草学……ひらひら花だっけ? 少なくとも教科書の写真で見た限りは、見た目は最悪だったわよね。触手生えてたし」
「でも、柑橘系のすっごくいい香りがするんでしょ? 香水の原料にもなるって書いてあったじゃない。ちょっと楽しみ」
「ポジティブね、レイチェル

ふわあ、とパメラが欠伸を噛み殺す。それが伝染したかのように、レイチェルもブランケットに隠れて欠伸をした。やっぱり試験勉強の疲れは着実に蓄積されているようで、倦怠感に似た眠気が襲って来る。せっかくだから早く読み進めたいけれど、夜更かしして本を読んでしまったら明日の授業に響くだろう。レイチェルは名残惜しい気持ちで古びた革表紙を閉じ、枕の脇へと置いた。

この続きはどうなるのだろう。本の内容を頭の中で想像しながら、レイチェルはそっと瞼を下ろした。

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