当事者にとっては後悔の残る、納得できない試合だったかもしれない。けれど、あの波乱だらけの開幕戦は、生徒達の心に残った。試合からたっぷり2週間は、校内はその話でもちきりだった。
セドリックとウッドの様子を目にしてしまったせいか、レイチェルは誰かが廊下で噂をしているとつい耳を傾けてしまう。しかし、セドリックが心配していたようにハッフルパフが卑怯だなんて言う人は誰も居なかったし、かと言って、グリフィンドールの選手がだらしないなんて言う人も居なかった。あの恐ろしい吸魂鬼が来たのによく健闘したと、誰もが選手達を尊敬した。あの状況でもアンジェリーナはクアッフルを取り落とさなかったし、双子のウィーズリーはブラッジャーから味方を守った。両チームとも、誰一人として吸魂鬼を前にしても試合を投げ出したりしなかったのだ。ただ一人箒から落ちてしまったハリー・ポッターについても、皆心配こそすれ、馬鹿にしたりしなかった。一部のスリザリン生は例外だが、まあこれはいつものことだ。一部始終を見ていたある人が、ハリー・ポッターが誰よりも吸魂鬼の近くに居たと証言したせいかもしれない。観客席に居た自分達ですら十分すぎるほどの恐怖だったのだ。間近にあの吸魂鬼の大群を目にしたらどんなに恐ろしいかは、想像に難くない。そんなわけで、良識ある人達の会話の中では、ハリー・ポッターの名前は「今回は運が悪かったね」と同情と共に語られた。
しかし何と言っても今回の話題の中心はハッフルパフだ。正直、試合の前は「どう考えたってグリフィンドールが圧勝する」と言う見解が多数派だった。いきなり試合をする羽目になった時点でそもそも不利だし、それ以前に一昨年のグリフィンドール戦では、わずか15分で試合終了。去年はリーグの中止によって直接の対戦はなかったが、スリザリンやレイブンクロー相手の試合では自分勝手なビーターに振り回されて、見ていられないくらいひどい試合だった。そうじゃなくても、元々ハッフルパフは万年最下位とナメられているような節があった。それが、グリフィンドールを! 今季優勝最有力候補のグリフィンドールを破ったのだ。生徒達は熱狂した。グリフィンドールに予期せぬ黒星がついたことによって、優勝杯の行方はわからなくなってくる。皆グリフィンドールが文句なしに優勝するところも見たいが、やっぱりちょっとくらいは波乱があった方が楽しいのだ。
そして自然と、話題は今回の勝利の一番の功労者であるセドリックへと向かう。あの状況下でなおスニッチを見失わなかったと言うのはシーカーとして素晴らしい。そして同時に、セドリックはキャプテンでもあり、つまりはあの────控えめに言って最悪だったチームを立て直したと言う点においてもチームに貢献している。
一躍時の人となったセドリックは、一気に校内に名前が知れ渡った。いや、勿論今までだってその優秀さや監督生と言う肩書によって十分に有名だったのだが。
「あのっ、セ……ミスター・ディゴリーって恋人とか、好きな人とか、居るんですかっ!?」
要するにこう言うことが起きるのだ。
今までもよくあったことだが、レイチェルと一言も喋ったことがない相手でも、レイチェルがセドリックと幼馴染であると言うことは知っている。本人に聞くよりも気が楽なのか、ちょっとした授業の空き時間や大広間で呼び止められて聞かれるのだ。恋人の有無だったり、好きなお菓子だったり、好きな色だったり。
「恋人は居ないと思う。好きな人については……断言はできないけど、とりあえず私は話を聞いたことはないわ」
「本当ですか!?ありがとう!!」
頬を染めて一緒に聞きに来た友人とはしゃいでいる様子は可愛らしい。そして聞かれる内容もレイチェルにすれば他愛のないことばかりだ。母親のサインを貰ってくれと頼まれることもあるので、知らない相手に話しかけられること自体は慣れている。しかし、こう頻繁だと少々気疲れするのもまた事実だった。
「うちの学年でも大人気だよ」
ジニーはそう言ってクスクス笑ってみせた。やっぱり、とわかってはいたがレイチェルは小さく溜息を吐いた。レイチェル達が下級生の頃も、やれどこそこの寮のチェイサーが背が高いだとか、監督生がハンサムだとか言って盛り上がることはあった。廊下ですれ違ったらキャーキャーはしゃいだり、話しかけてもらったら友達に自慢してみたり、そんな感じの。今はセドリックがそうされる側になったと、そう言うことだろう。
「背も高いしハンサムだし。それで頭良くて監督生で、おまけにクィディッチのキャプテンでシーカーまでやってるんだもん。ハッフルパフの子達は皆口をそろえて『すっごく優しい』って言うしさ。何て言うか、理想の王子様扱いだよ」
常々レイチェル自身も思ってはいるものの、他人の口からこうして聞いてみると、自分の幼馴染は何と言う完璧超人なのだろうか。遠くから見ているから理想に見えるのであって、話してみたらイメージと違った、なんてこともない。これは人気が出るわけだ、とレイチェルは今更ながら納得した。
レイチェルにとっては困ったこともあるが、このセドリック人気はセドリックにとっては良いことだったと思う。
崇拝の視線や労いの言葉を向けられるたび、最初セドリックは照れたような、困ったような顔をしていたが、そんな周囲の反応に、どうやら自分が思っていたよりもハッフルパフの勝利は祝福されていると気がついたらしい。温かい言葉ばかりをかけられるうちに、セドリックの中に燻っていた勝利に対する後ろめたさはすっかり溶けてしまったようだ。憧れで瞳をキラキラさせている下級生の男の子に「ありがとう」と穏やかに微笑む姿は、まさに理想の上級生然としていた。
幼馴染が周囲から評価されているのは喜ばしいことだし、セドリックが掴み取った勝利に胸を張れるようになったのなら、レイチェルだって嬉しい。たとえレイチェルが廊下や大広間で名前も知らない下級生に質問責めにされるとしても。
「レイチェルと仲が良いなら色々聞いてきてって言われたんだ。断ったけどね。だってきりがないんだもん」
そんなにセドリックのことばっかり喋ってたらレイチェルとおしゃべりする時間がなくなっちゃう、と溜息を吐くジニーに、レイチェルは心の底からほっとした。そして、その発言の可愛らしさに思わず頬が緩む。要するにセドリックよりもレイチェルと話がしたいと言っていてくれているのだ。
「ジニーもセドのことかっこいいなって思ったりする?」
「私は……その…………もう、意地悪。レイチェルだって知ってるでしょ」
「ごめんね。だってジニーが可愛いんだもの」
ちょっとしたからかいに、ジニーは髪と同じくらい赤くなって不満げに唇を尖らせる。ジニーは相変わらずハリー・ポッターに一途なのだ。ハリー・ポッター以外の男の子なんて、ジニーの目には映らない。
そんな恋する乙女そのもののジニーの様子は、レイチェルの目には微笑ましく映るのだった。
そもそもの事の発端であるドラコの腕の怪我────ハーマイオニーはとっくに治っているに違いないと主張する────もようやく治ったらしい。久しぶりに会わないかとドラコ本人から手紙が来たことによって、レイチェルはそれを知った。ずっと避けられているような気がしていたので、ドラコから誘いが来たことにレイチェルはほっとした。勿論断る理由なんてあるはずもない。11月の終わりのある週末、レイチェルはいつもの温室でドラコと待ち合わせた。
「久しぶり、ドラコ」
「ああ。遅れてすまない」
「そんなに待ってないわ。痕ひとつ残らないなんて、さすがマダム・ポンフリーね」
「ああ」
約束の時間に少し遅れて、ドラコは姿を見せた。相変わらず顔色は青白かったが、腕の包帯はとれて、すっかり完治したように見える。レイチェルが紅茶を用意していると、テーブルの向かい側へと腰を下ろしたドラコは、どこか疲れたような表情で溜息を吐いた。
「パンジーを撒くのに苦労した」
「……え?言ってないの?」
「君と会ってることは、誰にも言ってない」
当たり前だと言いたげなドラコの言葉に、レイチェルは驚いた。以前ドラコは自分と会っていることを知られない方が良いと言っていたが、まさかそこまで徹底していたなんて。恐らく、自分と会っていることで、レイチェルが肩身の狭い思いをしないようにと配慮してくれているのだ。ドラコの気遣いはありがたいことだとも思ったが、同時にレイチェルの頭には別の不安がよぎった。
「それって……ちょっと、まずいんじゃないかしら……」
「は?」
「何がまずいんだ」
「私もうまく説明できないけど……何て言うか……」
口ごもるレイチェルに、ドラコが苛立ったように眉を上げる。本当に何がまずいのかわからないのだろう。でも、うまく言えないけれど、まずいのだ。ドラコが言葉通り誰にも言っていないのだとしたら、パンジーの目から見て、レイチェルとドラコは今「秘密で」会っていることになってしまう。誰にも────エリザベス達は知っているが────内緒で、2人きりで。
「だって……付き合ってるのよね?その……えっと、パンジーと」
恋人に秘密で他の女の子と────まあレイチェルにはそんなつもりはないので心配する必要はないのだが────会っていると言うのは、ちょっと、いや、だいぶまずい気がする。レイチェルがその立場だったら、間違いなく嫌な気持ちになる。会っていたことよりも、隠していたことに対して。何か後ろ暗いことがあるから言えなかったのではと疑ってしまうだろう。パンジーが既にこのお茶会の存在を知っていたとしても関係ない。もう知っているから言わなくてもいいとか言う問題じゃなく、大切なのはドラコ本人の口から打ち明けたかどうかだ。このまま秘密にしておくのは絶対まずい。
正直にパンジーに打ち明けて会うのをやめろと言われたら寂しいが、後々バレて問題になることを考えれば今言っておいたほうがずっといい。いっそパンジーと3人でお茶会と言うわけにはいかないだろうか。あまり仲良くなれる気はしないが努力はする。自分が原因でドラコとパンジーの仲が拗れてしまう方が嫌だ。
「パンジーとはそんなんじゃない」
「……え?」
今後どうすべきかと悶々と考え込んでいると、苛立ったようにドラコが言った。レイチェルは思わず、ぽかんと口を開けてしまった。そんなんじゃないって、つまり、恋人同士じゃないってことでいいんだろうか? そう言えば、確かに、ドラコの口からはっきり聞いたわけじゃないけれど────。
「え? だって……2人でホグズミード……」
デートしてたじゃない、とレイチェルは首を傾げた。照れているんだろうか?
先日のホグズミード休暇で、2人でマダム・パディフットのお店に居たし、仲が良さそうに腕も組んでいた。ドラコも嫌がっている様子はなかった。だからてっきり、恋人同士なのだろうと思ったのだ。
「パンジーにどうしてもと言われただけだ。君と会ったあの店には2人で行ったが、他はクラッブとゴイルも居た」
不機嫌そうなドラコの言葉を、レイチェルはぼんやりと聞いていた。そうだ。別にあの店に男女で居たからって全員がデートで恋人同士だと決まったわけじゃない。だって、現にレイチェルとセドリックだって2人であのお店に居たのだ。当事者のドラコが恋人同士じゃないと言うのなら、違うのだろう。
「でも、あの、パンジーは……」
「パンジーの話はもういいだろう」
ドラコが不愉快そうに眉を上げたので、レイチェルは押し黙った。
ドラコにそのつもりがなかったとしても、パンジーにとってはデートだったんじゃないだろうか。だって、パンジーがドラコに恋をしているのは明らかだ。だからこそレイチェルが気に入らないのだろうし、何より、ドラコと一緒に居るときのパンジーは、いかにも恋する乙女と言った感じで、はにかんだような、幸せそうな笑みを浮かべている。大して親しくないレイチェルの目から見てもわかるのに、ドラコは本当に気づいていないんだろうか? それとも、知っていて気付かない振りをしているんだろうか? 何だか胸の中がもやもやした。けれど、こんなのはきっと余計なお世話だ。第三者に勝手にあれこれ決めつけられる鬱陶しさは、レイチェルも知っている。
「……あ、そうだ!前に、ドラコが読みたいって言ってた本ね、エリザベスが持ってたの。だから、もしまだ読んでなかったら……」
何だか重くなってしまった空気に、レイチェルは話題を変えることにした。せっかく久しぶりに会ったのに、このまま気まずいだけの時間を過ごすことになるのは避けたい。鞄の中をごそごそと漁っていると、目的の本ではない何かが指に触れた。
「……あれ?」
教科書と教科書の間に、折り畳まれた羊皮紙が挟まっていた。レイチェルには見覚えのないそれを摘まみあげて、広げてみる。そこに書いてあった文章を読んで、レイチェルは眉を顰めた。ノートの切れ端らしいそれには、見覚えのない筆跡で走り書きがされていた。
『セドリックに近寄らないで!』
「……どう思う?」
「どうもこうも。レイチェルとセドリックが仲良いのが気に入らない誰かの仕業じゃないの」
「それはわかってるけど!」
差出人不明のメッセージについて、レイチェルは勿論一人で抱え込む気などなかった。当然ドラコと別れて部屋に帰るなり親友達に事情を説明したわけだが、エリザベスはレイチェルが心配になるくらい真っ青になり、パメラは対照的にあまり驚かず、ベッドに寝っ転がってポップコーンを食べていた。
「付き合ってないって、ちゃんと言ったのに……」
このメッセージが、セドリックに恋をする誰かからのものだと言うのは恐らく間違いない。具体的に誰かはわからないが、その中にレイチェルとセドリックの関係が気に入らない人と居たと言うことだろう。頭では理解はできるが、到底納得はできない。こう言う誤解を受けるのが嫌だったから、セドリックとは恋人同士じゃないし、そうなる予定もないから心配する必要がないと、レイチェルは根気よく否定して来たのだ。
「レイチェル。逆よ、逆」
「逆って?」
「『恋人でも、セドリックを好きでもないくせに、ベタベタしないで』ってことじゃない?」
「ベタベタって……」
パメラの言葉に、レイチェルは眉を寄せた。ベタベタって────確かにレイチェルとセドリックは異性の割に仲が良い方だと言う自覚はあるが、それは一緒に居る年月と距離を考えれば当たり前だとも思う。それに、セドリックもレイチェルも、一応の節度は守っているつもりだ。たまにハグや親愛のキスをすることはあるけれど、それだって時と場所は考えている。
「セドリックが2人で一緒に授業を受けたり、図書室で勉強したりするのなんて、レイチェルだけよ。知らなかった?」
呆れたように言うパメラに、レイチェルはぐっと押し黙った。もちろん、セドリックが他の女の子に対してレイチェルほど親しげに振る舞っているわけじゃないのは知っていた。けれどそんなの、友人同士なら普通じゃないか。寮も違うのだから、そんなに四六時中一緒なわけない。それさえベタベタしてると言われてしまったら、一体レイチェルはどうすればいいのだ。学校に居る間は他人のように過ごせと言うことだろうか?
「……セドを好きじゃないからダメ? じゃあ、どう答えたらよかったの……?『セドはまだ恋人同士じゃないけど、いつかそうなりたいと思ってるの』……とか?」
「吠えメールのコレクションをしたいんなら、そうすべきだったかもね」
正直に答えたせいで反感を買ったのだと言うのなら、一体どう答えるのが正解だったのだろう。セドリックを好きでもないレイチェルが特別扱いをされるのが嫌だと言うのなら、セドリックに恋をしていればいいのかと思ったが、そう言うわけでもないらしい。困惑するレイチェルに、パメラは肩を竦めてみせた。
「何て答えても同じだったと思うわよ。結局、恋人じゃない女の子がセドリックの一番近くに居るのが嫌なんだから」
要するにどう足掻いても反感を買う運命だったらしい。レイチェルはどっと肩の辺りが重くなったような気がした。確かに、好きな男の子に、自分よりも親しい異性が居たとしたら嬉しくはないだろう。レイチェルにもそれはわかる。けれど、それって別にそんなに珍しいことではないと思うのだけれど、なぜレイチェルばかり責められるのだろう。やっぱりセドリックがやたらとモテるのが原因だろうか。
「まあ、でもね、庇うわけじゃないけど、その手紙よこした子の気持ち、わからないでもないのよね。レイチェルが悪いわけじゃないけど……何て言うか、まあ、いつかこうなる気はしてた」
「……どう言うこと?」
「セドリックって誰にでも親切だけど……何て言うか、隙がないのよね。隙って言うか、特別親しくなるきっかけがないって言うか……授業中におしゃべりするようなタイプでもないし……人当たりはいいけど、話好きってわけじゃないし。放課後は週3回もクィディッチの練習があって忙しいでしょ?それに監督生の仕事も。そうじゃなきゃ、レイチェルと図書室で勉強してるし。あと最近は犬の世話?」
「貴方達が幼馴染だと言うのは誰もが知っているわ。つまり、貴方がセドリックにとって特別だと言うことはね。だから2人で一緒に居られると、彼女達からすると入りにくいのよ。何と言うか……」
「レイチェルがセドリックを独占してるって感じてるのかも」
確かに、セドリックは目が回るほど忙しい。でも、別にレイチェルがわがままを言ってセドリックの時間を奪っているわけじゃない。友人とクィディッチだとか、後輩に勉強を教える約束があると言われたときには遠慮する。それはセドリックも同じで、お互いにお互いの交友関係は尊重しているつもりだ。独占しているとか、レイチェルのせいで仲良くなれないなんて言われるのは心外だ。レイチェルが眉を寄せていると、エリザベスがぽつりと呟いた。
「正直……私も、レイチェルはセドリックのこと好きなのかしらって思っていたわ」
自分では気がついてないだけで、と付け加えられた言葉にレイチェルは眉を寄せた。異性の幼馴染と言う関係性にロマンスを期待されるのは今に始まったことじゃない。けれど、セドリックもレイチェルもお互いをそう言う対象として見ていない。親友達はわかってくれていると思っていたのに。
「もちろん好きよ。でも、男の子としてじゃないわ」
もう何度も交わしたやり取りだ。レイチェルはセドリックが好きだ。わざわざ言葉にするまでもない。友人であり、兄のようでもあり、家族だ。好きだけれど、一緒に居てほっとすることはあっても、胸がときめくことはない。だからこれは恋ではない。レイチェルはそう思ってる。きっと、セドリックも同じだ。
「でも、セドリックよりも大事な人は居ないでしょう?」
エリザベスが困ったように微笑む。そんなのは当たり前だと口にしようとして────レイチェルの頭にふと、さっきのドラコとの会話がよぎった。
ドラコから否定の言葉を聞くまで、レイチェルはドラコとパンジーは恋人同士なのだと思っていた。結局誤解だったけれど、パンジーがドラコを好きだと言うのは間違いないと思っている。たぶん、パンジーが「ドラコなんか好きじゃない」と否定したとしても、レイチェルはきっとまだ自覚していないだけだと思うだろう。だって、パンジーのドラコに対する態度や表情は、恋をしているんだなとわかるから。ドラコと居るときは幸せそうで、表情に、瞳に、声に「好き」が滲み出ているから。
本当はセドリックを好きなんでしょうと、今まで何度も言われた。それが当たり前みたいに。レイチェルはその度に否定してきた。面白がってからかわれるのは嫌だったし、何でもかんでも恋に結び付けようとしないでほしいとウンザリした。幼馴染とは言え異性だからとか、セドリックがハンサムだからと思いはしても、何故レイチェルばかりがそう言われるのか、考えたことはなかった。
もしかして、レイチェルも周囲から見たらあんな風なのだろうか?セドリックが好きで好きで仕方がないと、顔に書いてあるのだろうか?だから、「自分では気づいてないだけ」なんて、言われてしまうのだろうか?
もしかして、レイチェルとセドリックも、周囲からはあんな風に見えているのだろうか?